毎日、暑い日が続く夏。そんな日のお昼ご飯には、おそうめんを「つるっ、つる~っ」といただきたくなりますね。
麺を「すする」という食べ方は、お箸を使って麺を味わう日本ならではの食文化のひとつです。すすって食べることで、つゆが麺によく絡み、さらに空気が一緒に口の中へ取り込まれるため、香りが鼻へ抜けて風味をより豊かに感じることができます。
これは、ワインや日本酒のテイスティングで空気と一緒に口に含み、トロネーザル(口中香・あと香)を楽しむ仕組みにも通じています。香りを味わいながら食べることは、おいしさを感じる大切な要素なのです。

「すする」が難しい人が増えている?
最近は、麺を上手にすすれない人が増えているといわれています。
実は「すする」という動作は、一見簡単そうに見えて、意外と複雑な口や呼吸の機能によって成り立っています。
上手にすするためには、唇をすぼめて素早く息を吸い込み、口の中に麺を取り込みながら、一時的に呼吸をコントロールする必要があります。その後、鼻から自然に息を吐き出します。
そのため、鼻呼吸と口呼吸を上手に使い分けることが大切です。鼻呼吸が苦手な人は、麺をうまく吸い込み続けることが難しくなります。
また、
- 幼い頃にすすり方を教わる機会がなかった
- 「すするのは行儀が悪い」という意識がある
- スープが飛んで服が汚れるのが気になる
- 肺活量や口周りの筋力が弱い
など、さまざまな要因が関係していると考えられます。
むせることは悪いことではありません
口の中の麺やスープと呼吸をうまくコントロールできないと、気管に入ってしまい「むせ」が起こります。

しかし、むせること自体は悪いことではありません。
むせは、食べ物や飲み物が気管や肺へ入り込むのを防ぐための大切な防御反応です。肺炎や窒息を予防するために欠かせない働きといえます。
そのため、高齢者や乳幼児など、飲み込む力が十分でない方は、無理にすすろうとする必要はありません。安全に食べることを優先することが大切です。
すする力を支える口のトレーニング
「最近すすりにくくなった」「吸う力が弱くなった気がする」という方は、口周りの筋肉を意識して動かしてみましょう。
例えば、
唇の体操


- 「うー」と口をすぼめて5秒キープ
- 「いー」と口を横に広げて5秒キープ
- これを数回繰り返す

ストローで吸う練習
- 細めのストローで少量の水を吸う
- 無理をせずゆっくり行う
舌の体操


- 舌を前に出す
- 上下左右に動かす
- 頬の内側を舌で押す
こうした運動は、唇を閉じる力や吸う力の維持につながります。
ただし、食事中によくむせる方や飲み込みに不安がある方は、無理をせず、医師や言語聴覚士(ST)に相談しましょう。
おいしく食べる力を育てるために
おいしく食べるためには、唇をしっかり閉じる力や、鼻呼吸と口呼吸を使い分ける力が欠かせません。
そして、その力は日々の食事の中で自然と育まれていきます。
子どもは家族の食べ方を見ながら、少しずつ食べる力を身につけていきます。大人になってからも、誰かと一緒に食卓を囲み、会話を楽しみながら食べることは、口の機能を保つことにつながります。
この夏は、冷たいおそうめんを味わいながら、「すする」という日本の食文化と、お口の働きについて少し意識してみてはいかがでしょうか。
おいしく食べることは、健康な口を育み、健康な身体を支える第一歩なのです。

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