赤ちゃんが自分で食べ物をつかみ、口に運ぶ「手づかみ食べ」。
離乳食が進んでくると、食べ物を手で握りつぶしたり、テーブルに塗り広げたり、床に落としたり……。
せっかく作ったごはんがぐちゃぐちゃになってしまい、思わずため息が出てしまうことはありませんか?
「スプーンで食べさせたほうが早いのに」
「手や服が汚れるから、できれば避けたいな」
そんなふうに感じることもあると思います。
でも、赤ちゃんが手で食べ物をつかみ、自分の口に運ぶことには、大切な意味があります。
手づかみ食べは、自分で食べる力を育てるための大切な経験の一つです。
今回は、手づかみ食べがなぜ大切なのか、赤ちゃんのお口の発達との関係や、安全に食事を楽しむためのポイントも交えながら考えてみましょう。
1.手づかみ食べの前から始まっている「食べる準備」
赤ちゃんは、手づかみ食べを始める前から、手や口を使ってさまざまな経験をしています。
生後4か月ころになると、興味を持ったものに手を伸ばしたり、手に取ったものを口に運んだりする姿が見られるようになります。
指しゃぶりやおもちゃをなめることも、その一つです。
大人から見ると、ただ遊んでいるだけのように思えるかもしれません。
でも、こうした経験は、自分の手や口を使いながら、ものの感触を確かめたり、手と口を連動させたりする機会になっています。
もちろん、おもちゃをなめることと、食べ物を口に入れて食べることは同じではありません。
それでも、自分の手を口に運ぶ経験や、口に触れるものの感触を確かめる経験は、その後、自分で食べ物を口に運ぶ動きにつながっていきます。
食べることは、生まれたときからすべて上手にできるわけではありません。赤ちゃんは、生まれながらに備わった反射や、成長に伴う身体の発達、さまざまな経験を通して、少しずつ食べる動作を身につけていきます。
手づかみ食べも、その大切な過程の一つなのです。
2.手づかみ食べは「自分で食べる」ための第一歩
離乳食が始まったばかりのころは、大人がスプーンで食べ物を口に運んであげることが中心です。
やがて赤ちゃんは、食べ物に興味を示し、自分で手を伸ばしたり、つかもうとしたりするようになります。
つかんだ食べ物を口に運ぼうとしても、最初からうまくできるとは限りません。
途中で落としてしまったり、口に届かなかったりすることもあるでしょう。
それでも、赤ちゃんは自分で食べようとしています。
手を伸ばす、つかむ、持ち上げる、口に運ぶ。
こうした動作を繰り返すことで、自分の手を使って食べる経験を積み重ねていきます。
自分で食べることは、食事の動作を身につけるだけでなく、赤ちゃんが自分から食べ物に関わる機会にもなります。
大人が食べさせてあげることも大切ですが、発達に応じて、自分で食べる機会もつくってあげたいですね。
3.手で触れることで、食べ物のことを知っていく
私たちは食べ物を口に入れる前から、さまざまな情報を受け取っています。
例えば、バナナとにんじん。
見た目が違うだけでなく、触ったときの感触も異なります。

やわらかいもの、かたいもの。
つるつるしたもの、ざらざらしたもの。
水分の多いもの、少ないもの。
赤ちゃんは、手で触れることで、こうした食べ物の違いを感じ取っていきます。
指先で押してみる。
握ってみる。
つまんでみる。
持ち上げてみる。
こうした動作を通して、食べ物の大きさや形、硬さなどを知る機会が生まれます。
握るとつぶれる食べ物もあれば、指で押しても形が変わらない食べ物もあります。
手で触れた経験と、実際に口に入れて食べる経験。その両方を重ねながら、赤ちゃんは少しずつ食べ物について学んでいきます。
手づかみ食べでは、口に運ぶ前から、食べ物に触れて確かめる経験が始まっているのです。
4.手づかみ食べは、お口の使い方を学ぶ機会にもなる
ここで注目したいのが、お口の発達です。
食べるためには、食べ物を口に入れるだけでなく、唇や舌、頬、あごなどを使って、食べ物を取り込み、噛み、飲み込む必要があります。
手づかみ食べでは、自分で食べ物を口に運び、口に近づける位置やタイミングを調整する経験が生まれます。
また、食べ物の形状や食べ方によっては、唇で食べ物を取り込んだり、前歯でかじり取ったりする動作も経験できます。
こうした動作は、赤ちゃんの発達に合った食べ物を使い、実際に食べる経験を重ねる中で身についていきます。
ただし、手づかみ食べをすれば、必ず噛む力が育つというわけではありません。
大切なのは、赤ちゃんの発達に合った食べ物を用意し、無理なく食べる経験を積み重ねていくことです。
手づかみ食べは、手の動きだけでなく、自分で食べ物を口に運び、お口を使って食べる経験にもつながっています。
離乳食では、食材の硬さや大きさも大切です。
赤ちゃんがどのように食べ物を口に運び、口の中で扱っているかを観察しながら、発達に合った食材を選んでいきましょう。
さらに詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
▶ 関連記事:「これって丸飲み?」離乳食の固さ・大きさ・食べ方|赤ちゃんの「食べる力」を育てよう
5.目と手と口をつなぐ経験
手づかみ食べでは、目で食べ物を見て、手を伸ばし、つかみ、口へ運ぶという一連の動作が行われます。
目で見たものに向かって手を伸ばす。
手でつかんだものを持ち上げる。
口の位置を意識しながら運ぶ。
こうした動きには、目と手、そして口の協調が関係しています。
初めのうちは、食べ物を落としたり、口までうまく運べなかったりすることもあります。
けれど、経験を重ねるうちに、少しずつ動きが変化していきます。
最初は手のひら全体で握っていた赤ちゃんも、成長するにつれて、指先を使ってつまむ動きが見られるようになります。
こうした変化も、赤ちゃんの成長を感じられる場面の一つです。
最初から上手にできることを目指すのではなく、赤ちゃんが自分でやってみる機会を大切にしたいですね。
また、食べることは、手や目の動きだけでなく、噛むことや飲み込むことなど、さまざまな機能が関係しています。
▶ 関連記事:「よく噛む」だけではない、咀嚼の大切さ
6.手づかみ食べを見守るときに大切なこと
手づかみ食べには、自分で食べる経験を積み重ねられるというよさがあります。
一方で、赤ちゃんが安全に食べられるよう、食材の選び方や食事中の見守りにも気を配る必要があります。

① 赤ちゃんの発達に合った食材・形状にする
手づかみ食べに適した食材や形状は、赤ちゃんの発達によって異なります。
手で持ちやすいことだけでなく、口の中で扱える硬さや形状かどうかも考えましょう。
小さく切れば安全、というわけではありません。
小さくても硬いものや、丸くてつるっとしたもの、弾力が強く噛み切りにくいものなどは、窒息の危険があります。
例えば、離乳期のりんごや梨は、やわらかくなるまで加熱するなど、調理方法を工夫します。
また、乾いた豆やナッツ類は窒息の危険があるため、5歳以下の子どもには食べさせないようにしましょう。餅や白玉団子など、粘着性が高く、飲み込みにくい食品にも注意が必要です。
ミニトマトやぶどうなど、丸くて滑りやすい食品も、そのまま与えることは避けましょう。
食品によっては、切るだけでは十分に安全とはいえません。食品の種類や硬さ、形状に応じて、安全に食べられる状態にすることが大切です。
月齢だけで一律に判断するのではなく、赤ちゃんの発達や食べる様子に合わせて食材を選びましょう。
② 食事中は、必ずそばで見守る

赤ちゃんが食べているときは、必ず大人がそばで見守りましょう。
食べ物を口に詰め込みすぎていないか、口の中にため込んでいないか、食べにくそうにしていないかなど、食べる様子を観察することも大切です。
食事中は、安定した姿勢で座り、食べることに集中できる環境を整えます。
歩き回ったり、遊んだりしながら食べることは避けましょう。
口の中に食べ物が入っているときに、笑ったり、泣いたり、話したりすることも、窒息につながるおそれがあります。
また、泣いている赤ちゃんを食べ物でなだめようとしたり、眠そうなときに無理に食べさせたりすることも避けましょう。
食事中は赤ちゃんから目を離さず、落ち着いて食べられる環境を整えることが大切です。

③ 汚れても大丈夫な準備をする
手づかみ食べでは、手や口の周り、服などが汚れることがあります。
食事用エプロンを使ったり、テーブルや床にシートを敷いたりして、片づけやすい環境を整えておくのもおすすめです。
汚れることを気にして大人がすべて食べさせてしまうよりも、安全に自分で食べられる環境をつくってあげたいですね。
④ うまく食べられなくても、焦らない
つかんだ食べ物を握りつぶす。
口に運ぶ途中で落とす。
つかんでも、なかなか口に入れない。
そんな姿を見ても、すぐに失敗だと考える必要はありません。
赤ちゃんは、食べ物に触れたり、自分で口に運ぼうとしたりしながら、少しずつ食べる経験を重ねていきます。
ただし、食べることに強い困難がある、食べ物を口に運ぶことを極端に嫌がるなど、気になる様子が続く場合は、かかりつけの小児科や歯科などに相談してみましょう。
窒息予防について、もっと詳しく知りたい方へ
赤ちゃんが安全に食事を楽しめるよう、食材の選び方や食事中の注意点について、公的機関の資料も参考にしてください。
参考資料
- こども家庭庁「窒息・誤飲事故」
離乳期の食材の選び方や調理方法、食事中の窒息を防ぐための注意点が紹介されています。
こども家庭庁「窒息・誤飲事故」 - 消費者庁「食品による子どもの窒息・誤嚥事故に注意!」
豆やナッツ類、ミニトマト、ぶどうなど、窒息や誤嚥の危険がある食品と、食事中に気をつけたいポイントについて解説されています。
消費者庁「食品による子どもの窒息・誤嚥事故に注意!」 - 厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」
授乳・離乳の基本的な考え方や、子どもの発育・発達に応じた離乳の進め方についてまとめられています。
厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」
7.家族の食事も、食べることへの興味につながる
赤ちゃんは、周りの人の様子をよく見ています。
ママやパパが楽しそうに食事をしている姿も、赤ちゃんにとっては食べることを身近に感じる機会になります。
家族が食卓を囲み、食べ物をおいしそうに食べている。
そんな日常の風景の中で、赤ちゃんも食べ物に興味を持つようになるかもしれません。

もちろん、周りの人が食べているからといって、赤ちゃんに無理に食べさせる必要はありません。
赤ちゃんの発達や食べる準備に合わせて、少しずつ食事に親しんでいきましょう。
手づかみ食べも、家族と一緒に食べる時間も、食べることへの興味を育てる大切な機会です。
子どもから高齢者まで、世代を超えて大切にしたい「食べる力」については、こちらの記事でも紹介しています。
▶ 関連記事:敬老の日に考えたい「食べる力」~子どもから高齢者まで、いつまでもおいしく食べるために~
まとめ:自分で食べたい気持ちを大切に
赤ちゃんが手を伸ばして食べ物をつかもうとする姿。
自分で口に運ぼうと、一生懸命に手を動かす姿。
その一つひとつが、自分で食べることを覚えていく過程です。
手づかみ食べは、単に手を使って食べることではありません。
食べ物に触れ、形や感触を確かめ、自分で口に運び、お口を使って食べる。
そんな経験を積み重ねる機会でもあります。
もちろん、毎回手づかみ食べをしなければいけないわけではありません。
大人が食べさせてあげることも、自分で食べることも、どちらも大切な食事の経験です。
赤ちゃんの様子を見ながら、無理のない範囲で自分で食べる機会をつくっていきましょう。
そして、食べ物をつかむ様子だけでなく、口に運ぶ様子や、口の中でどのように食べているかにも目を向けてみてください。
「自分で食べたい」という気持ちを大切にしながら、赤ちゃんの「食べる力」の成長をゆっくり見守っていきたいですね。
参考資料
- こども家庭庁「窒息・誤飲事故」
- 消費者庁「食品による子どもの窒息・誤嚥事故に注意!」
- 厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」

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