「いい歯の日」に考えたい、歯1本1本の役割|前歯・犬歯・奥歯でつくる「食べる力」

お口ケア

11月8日は「いい歯の日」です。

「い(1)い(1)歯(8)」という語呂合わせから、日本歯科医師会が1993年に定めた記念日で、「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という8020(ハチマルニイマル)運動の一環でもあります。

前回のハロウィンの記事では、子どものむし歯と、その奥にある生活について考えました。

むし歯で歯を失うことが、なぜ「食べる力」に関わるのでしょうか。その答えは、歯1本1本に、ちゃんと役割があるからです。

今回は「いい歯の日」に合わせて、前歯・犬歯・奥歯それぞれの役割を、食べる場面から見直してみたいと思います。

この記事のポイント

  • 前歯は「切る」、犬歯は「引き裂く」、奥歯は「すりつぶす」
  • 子どもの乳歯20本にも、大人と同じ役割があります
  • 高齢になって歯が減ると、チームに穴が開いた状態になります
  • 最後に、今日からできるお口チェックを用意しました

歯の役割は「チームプレー」です

私たちの歯は、どれも同じ形をしているわけではありません。

前にある歯、横にある歯、奥にある歯。それぞれ形が違うのは、それぞれに違う仕事があるからです。

食べることは、この3つのチームが順番にバトンをつなぐことで成り立っています。

前歯|食べ物を「切る・かじり取る」

前歯は薄くて平たい形をしています。包丁のように、食べ物を一口の大きさに切り分けたり、かじり取ったりするのが仕事です。

子どもの「手づかみ食べ」で、前歯でかじり取る経験が大切だと言われるのは、この前歯の使い方を学んでいる時期だからです。

前歯がうまく使えないと、一口の量が大きくなりすぎて、奥歯で処理しきれずに丸飲みにつながることもあります。

犬歯|食べ物を「引き裂く・支える」

犬歯は、先が尖った形をしています。食べ物をしっかりつかみ、引き裂くのが仕事です。

そしてもう一つ、犬歯には、あごを横に動かしたときに噛み合わせを案内する「道案内」のような役割もあると言われています。

目立たない存在ですが、噛み合わせのバランスを支える、大切な歯です。

奥歯|食べ物を「噛みつぶす・すりつぶす」

奥歯は、大きくて表面に溝のある形をしています。食べ物を噛みつぶし、すりつぶして、飲み込みやすい「食塊(しょっかい)」にするのが仕事です。

唾液とよく混ざり合うのも、このすりつぶす工程があってこそです。

奥歯の働きが弱くなると、食べ物を十分に細かくできないまま飲み込むことになり、胃腸への負担や、むせにもつながりやすくなります。

子ども編|乳歯20本にも、同じ役割があります

子どもの乳歯は、全部で20本です。

本数は大人の歯より少なくても、前歯・犬歯・奥歯のチーム構成は同じで、1本1本に役割があります。

「どうせ生え変わるから」と思われがちな乳歯ですが、この時期の乳歯は、食べる力を育てる練習の場そのものです。

前歯でかじり取り、奥歯ですりつぶす。その経験を繰り返すことで、噛む力や舌の動きが育っていきます。

そして乳歯にはもう一つ、次に生えてくる永久歯の場所を守る、という役割もあります。

大人の歯は、親知らずまで入れると32本、親知らずを除くと28本です。乳歯から永久歯へのバトンがうまく渡せるように、乳歯の時期のお口の健康を守ってあげたいですね。

子どもの食べ方やお口の発達については、「これって丸飲み?」離乳食の固さ・大きさ・食べ方でも紹介しています。

高齢者編|歯が減ることは、チームに穴が開くこと

年齢とともに歯を失うと、このチームに穴が開いた状態になります。

例えば奥歯を失うと、すりつぶす力が落ちて、硬いものや繊維のあるものを避けるようになります。食べられるものが偏ると、栄養の偏りにもつながります。

前歯を失えば、かじり取ることが難しくなるだけでなく、発音や見た目にも影響します。

だからこそ、入れ歯やブリッジなどで失った部分を補うことには、「見た目を整える」以上の意味があります。チームの役割を取り戻すことなのです。

8020運動が「20本」を目標にしているのも、20本以上の歯があれば、ほとんどの食べ物を無理なく食べられると言われているからです。

残っている歯を1本でも多く守ること。その毎日のケアが、「いつまでもおいしく食べる力」を守ることにつながります。

今日からできる「歯の役割」チェック

最後に、ご家庭で見直せるチェックを用意しました。子ども編と大人・高齢者編に分けてあります。

子ども編

  • □ 前歯でかじり取って食べられていますか
  • □ 奥歯ですりつぶす前に、丸飲みしていませんか
  • □ 左右どちらか片方だけで噛んでいませんか
  • □ 乳歯の本数や、生え変わりの様子を把握していますか

大人・高齢者編

  • □ 自分の歯が今、何本残っているか知っていますか
  • □ 奥歯で硬いものやすじのあるものを噛めていますか
  • □ 片方だけで噛む癖がついていませんか
  • □ 入れ歯が合わないまま、我慢していませんか
  • □ 1年以内に歯科健診を受けましたか

当てはまる項目があっても、すぐに心配する必要はありません。気づくことが、ケアの第一歩です。

気になることが続く場合には、かかりつけの歯科医院で相談してみましょう。

1本の歯を守ることが、食べる力を守ること

前歯が切り、犬歯が支え、奥歯がすりつぶす。

歯は1本1本が主役で、代わりのきかないチームです。

子どもの乳歯も、高齢になって残っている歯も、同じように大切な1本です。

「いい歯の日」をきっかけに、今日の食事で、どの歯が働いているか、少しだけ意識してみませんか。

次回は、「よく噛む」だけではない、咀嚼の大切さについて、もう少し深く掘り下げて書く予定です。

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