パンはなぜ膨らむ?発酵から考える「お口の中のカビ」

お口ケア

パン作りをしていると、季節によって発酵の進み方が違うことに気づきませんか?

冬は、パン生地をオーブンの発酵機能に入れても、なかなか発酵が進まない……。

「まだかな? もう少しかな?」

と、何度も様子を確認しながら、じっと待つこともあります。

ところが、夏になると一転!

「えっ! もうこんなに膨らんでる!」

室温が高くなると、パン生地の発酵がどんどん進んでしまいます。

ちょっと目を離したすきに、想像以上にふっくら。

「ちょっと待って~!そんなに急いで膨らまなくてもいいのに!」

パン作りをしていると、こんな経験もありますよね。

パンを膨らませているのは「酵母」

このパン生地をふっくら膨らませているのが、**酵母(イースト)**です。

酵母は、パン生地に含まれる糖分などを利用して発酵し、その過程で生じる二酸化炭素によってパン生地を膨らませます。

だから、温度が高くなる夏は発酵が進みやすく、冬は発酵に時間がかかるんですね。

そして、ここからが今日のお話。

実は、この酵母は「真菌」の仲間なんです。

「真菌って……カビ?」

そうなんです。

真菌には、パン作りに利用される酵母のように私たちの生活に役立っているものもあれば、病気の原因になるものもあります。

そして実は、私たちの体にも普段から存在している真菌があります。

その代表的なものの一つが、

**「カンジダ菌」**です。

では、カンジダ菌とはどんな菌なのでしょう?

そして、なぜ病気を引き起こすことがあるのでしょうか?

今回は、パンの発酵からちょっと話を広げて、「お口の中のカビ」について考えてみたいと思います。

カンジダ菌は、実は身近な存在

「カンジダ」と聞くと、「病気を起こす菌」というイメージがあるかもしれません。

でも、カンジダ菌はもともと病原性がそれほど強くなく、健康な人の皮膚や口の中、腸管などにも存在している常在菌です。

普段は、ほかの細菌や微生物などとバランスを保ちながら存在しています。

つまり、

「カンジダ菌がいる=病気」ではありません。

ところが、何らかの原因で体や口の中の環境が変化すると、カンジダ菌が増殖し、症状を引き起こすことがあります。

それが「カンジダ症」です。

お口の中にも「カンジダ症」がある

カンジダ症は、口の中だけでなく、食道や皮膚、陰部などにも発症することがあります。

その中でも、口の中に発症するものが**「口腔カンジダ症」**です。

口腔カンジダ症になると、

  • 口の中に白い膜のようなものが付着する
  • 舌や頬の内側などが白くなる
  • 白いものを拭うと赤くなっている
  • 口の中がヒリヒリする
  • 食事をすると痛い、しみる
  • 粘膜が赤くなったり、びらんができたりする

などの症状がみられることがあります。

ただし、口の中が白いからといって、すべてが口腔カンジダ症というわけではありません。

舌に付着した「舌苔」など、別の原因で白く見えることもあります。

「舌が白いからカンジダかも」と自己判断せず、気になる症状が続く場合には、歯科や口腔外科に相談しましょう。

どうしてカンジダ菌が増えるの?

では、普段は目立たないカンジダ菌が、どうして増えてしまうのでしょうか?

その一つが、口の中の環境の変化です。

例えば、

  • 唾液が少なく、口の中が乾燥している
  • 口腔清掃が十分にできていない
  • 入れ歯をきちんと清掃できていない
  • 体力や免疫力が低下している
  • 抗菌薬を長期間使用している
  • ステロイド薬などを使用している
  • 糖尿病などの基礎疾患がある

などが関係することがあります。

特に、**「口腔乾燥」と「入れ歯」**は、口腔カンジダ症を考えるうえで重要なポイントです。

唾液は、お口の中の「お掃除屋さん」

私たちの口の中では、毎日たくさんの唾液が分泌されています。

唾液には、食べ物を飲み込みやすくするだけではなく、

口の中を洗い流す
粘膜を守る
口腔内の環境を整える

など、さまざまな働きがあります。

ところが、加齢や薬の副作用などによって唾液が減ると、口の中の自浄作用が低下し、口腔内の環境が乱れやすくなります。

「最近、口の中が乾くな……」

という方は、少し注意してみてくださいね。

入れ歯のお手入れも忘れずに!

入れ歯を使っている方は、入れ歯のお手入れも大切です。

入れ歯の表面には、食べ物のカスやプラークなどが付着します。

そのままにしていると、細菌やカンジダ菌などが増殖しやすくなります。

入れ歯は毎日取り外して清掃し、必要に応じて義歯洗浄剤などを使用しましょう。

そして、

「入れ歯を入れているから、口の中はきれい」

ではありません。

入れ歯も、口の中も、どちらも清潔に保つことが大切です。

就寝時に入れ歯を外すかどうかなどについても、歯科医師から指示されている方法に従って、適切に管理しましょう。

「菌をゼロにする」必要はない

ここで大切なのは、

「カンジダ菌を完全になくさなければ!」

と考えすぎないこと。

カンジダ菌は、健康な人の体にも存在することがあります。

大切なのは、菌をゼロにすることではなく、カンジダ菌が増えすぎないように、口の中の環境を整えることです。

そのためにも、毎日の口腔ケアが重要になります。

口腔カンジダ症を予防するために

予防の基本は、まずお口の中を清潔に保つこと。

毎日の歯みがきに加え、入れ歯を使用している方は、入れ歯もしっかり清掃しましょう。

舌や粘膜のケアも、状態に合わせて行います。

また、口の中が乾燥している場合には、口腔保湿剤などを活用して、粘膜の乾燥を防ぐことも大切です。

そして、

しっかり睡眠をとる
疲れやストレスをためすぎない
バランスのよい食事をとる

など、体全体の健康を保つことも忘れずに。

「口の中が白い」「ヒリヒリする」「食べると痛い」など、気になる症状が続く場合は、自己判断せず歯科・口腔外科に相談しましょう。

パンの発酵から、お口の中を考えてみる

パンをふっくら膨らませてくれる酵母。

私たちの身近には、食品づくりに利用される真菌もいれば、体の中に普段から存在している真菌もいます。

そして、カンジダ菌もその一つ。

普段は目立たなくても、口の中の環境が変化すると増殖し、症状を引き起こすことがあります。

だからこそ大切なのは、

「菌を怖がる」のではなく、「菌とのバランスを保つ」こと。

毎日の歯みがきや入れ歯のお手入れ、口腔乾燥への対策など、日頃からお口の環境を整えておきましょう。

パン作りをしていて、夏に発酵がどんどん進んでしまったときには、

「微生物って、環境によって活動が変わるんだな」

そして、

「私たちの口の中にも、いろいろな微生物が暮らしているんだな」

と思い出してみてください。

お口の健康も、毎日の小さなケアから。

気になる変化があったときは、早めに歯科医院へ相談することも大切ですよ。

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