「うちの子、野菜が嫌いで全然食べないんです」
「お肉を口に入れても、いつまでもモグモグしていて……」
子どもが食べてくれないと、栄養が足りているのか心配になりますよね。
好き嫌いをなくそうと、あれこれ工夫している保護者の方も多いのではないでしょうか。
もちろん、味やにおい、見た目などが苦手なこともあります。
でも、ちょっと考えてみたいのです。
その「食べない」は、本当に好き嫌いなのでしょうか?
もしかしたら、食べ物のかたさや食感が苦手だったり、口の中でうまく扱えなかったりするのかもしれません。
今回は、子どもの食べ方を観察することで見えてくる「食べにくさ」について、保育の視点も交えながら考えてみます。
1.「食べない」には、いろいろな理由がある
子どもが食べ物を残したり、口から出したりすると、つい「嫌いなのかな?」と思ってしまいます。
でも、食べない理由はひとつではありません。
例えば、こんな様子はありませんか?
- 特定の野菜だけでなく、似たような食感の食べ物を嫌がる。
- お肉を口に入れてから、いつまでも噛んでいる。
- 食べ物を口に入れても、なかなか飲み込まない。
- 口に入れた食べ物を、何度も出してしまう。
- 食事に時間がかかり、途中で疲れてしまう。
こうした様子が見られるときは、味の好みだけでなく、食べ物のかたさや食感、口の動かし方なども関係している可能性があります。

もちろん、ひとつの様子だけで「食べにくさが原因」と決めつけることはできません。
大切なのは、「何を食べないか」だけでなく、「どのように食べているか」にも目を向けることです。
2.食べているときの様子を観察してみよう
子どもの食べ方を観察すると、これまで気づかなかったことが見えてくるかもしれません。

どんな食べ物が苦手なの?
野菜が苦手な子でも、すべての野菜が食べられないとは限りません。

柔らかく煮た野菜は食べられるけれど、生野菜は苦手。
ハンバーグは食べられるけれど、薄切りのお肉はいつまでも噛んでいる。
このように、食材の種類だけでなく、かたさや食感によって食べ方が変わることがあります。
「野菜が嫌い」「お肉が嫌い」とひとまとめにせず、どんな食材なら食べられるのかを見てみましょう。
口の中では、どんな様子?
食べ物を口に入れたあと、すぐに飲み込んでいるでしょうか。それとも、長い時間モグモグしているでしょうか。
食べ物を口の中にためたまま、なかなか飲み込まないことはありませんか?

食べ物を噛んで、舌や頬を使って動かし、飲み込みやすい状態にするには、口全体の働きが関係しています。
食べる動作は、単に歯で噛むだけではないのです。
咀嚼の大切さについては、こちらの記事でも紹介しています。
食事の環境によって違いはある?
食事のときの気分や環境も、子どもの食べ方に影響することがあります。
眠いときや疲れているときは、食欲が落ちることもありますし、初めて見る食べ物に警戒する子もいます。
また、家庭では食べないのに、保育園では食べる。その反対に、保育園では食べるのに、家庭では食べないということもあります。
食べ方は、食材だけで決まるわけではありません。
食べているときの表情や様子、食事にかかる時間なども含めて観察することが大切です。
3.保育園と家庭で、気づきを共有しよう
保育現場では、さまざまな子どもたちが同じ時間に食事をします。
だからこそ、子ども一人ひとりの食べ方の違いに気づく機会があります。
例えば、
「この子は、柔らかい食べ物はよく食べるけれど、かたいものは口に残りやすい」
「食べ物を口に入れてから、飲み込むまでに時間がかかる」
「食事の後半になると、噛む動きがゆっくりになる」
こうした様子に気づいたら、食べないことだけを問題にするのではなく、どのような場面で困っているのかを考えてみましょう。
そして、その気づきを保護者と共有してみます。
家庭ではどんなものを食べているのか。食事にどれくらい時間がかかるのか。似たような様子が見られるのか。
お互いの様子を伝え合うことで、子どもが食べやすい環境や、必要な支援を考える手がかりになります。
「どうして食べないの?」と考えるだけでなく、「どんなときに食べにくそうなのかな?」と視点を変えてみる。
それが、子どもの食べる力を支える第一歩になるのではないでしょうか。
子どもから高齢者まで、食べる力を育み、支えていくことについては、こちらの記事もご覧ください。
▶ 敬老の日に考えたい「食べる力」~子どもから高齢者まで、いつまでもおいしく食べるために~
4.無理に食べさせる前に、できること
苦手な食べ物を食べられるようになってほしい。栄養のバランスも気になる。
そんな思いから、「もうひと口食べてみよう」と声をかけることもあるでしょう。
でも、食べにくさがある場合、無理に食べさせようとすると、食事そのものが苦痛になってしまうこともあります。
まずは、子どもの様子をよく観察し、食べやすいものや、安心して食べられる環境を大切にしてみましょう。
食材のかたさや調理方法を工夫することで、食べやすさが変わる場合もあります。
具体的な工夫については、こちらの記事で紹介しています。
▶ 食材の工夫で噛めるようになる|食べやすさを考えた調理のポイント
また、離乳食の時期には、成長に合わせた食材のかたさや大きさも大切です。
赤ちゃんの「モグモグ・カミカミ」や丸飲みが気になる方は、こちらの記事も参考にしてください。
なお、食べ物を口の中にためる、繰り返しむせる、飲み込むのに苦労する、食事に極端に時間がかかるなどの様子が続く場合は、自己判断で様子を見続けず、小児科医や歯科医師などの専門家に相談しましょう。

おわりに
子どもが食べないと、つい「好き嫌いをなくさなければ」と考えてしまいがちです。
でも、その背景には、味やにおいの好みだけでなく、食材のかたさや食感、食事の環境、口の動かし方など、さまざまな理由が隠れていることがあります。
だからこそ、食べないことだけに注目するのではなく、食べているときの様子にも目を向けてみませんか?
「どうして食べないの?」
から、
「どんなところが苦手なのかな?」
「どんなときなら食べやすいのかな?」
へ。
少し視点を変えるだけで、子どもへの関わり方も変わるかもしれません。
「好き嫌いかな?」と思ったら、「食べにくいのかも?」という視点も持ってみる。
子どもの小さなサインに気づき、その子に合った方法を一緒に考えていく。
そんな積み重ねが、子どもたちの「食べる力」を支えていくのではないでしょうか。

コメント