皆さんは普段、よく噛んで食べていますか?
農林水産省の「食育に関する意識調査報告書(令和7年3月)」によると、「ゆっくりよく噛んで食べている」と回答した人は46.2%、「ゆっくりよく噛んで食べていない」と回答した人は53.3%でした。半数以上の人が「よく噛めていない」と感じているようです。特に20代と70歳以上では、その割合が高くなっています。

「よく噛んで食べることが大切」という認識は広がっていますが、実際の食生活ではなかなか実践できていないのかもしれません。
よく噛むとどんないいことがあるの?
日本学術会議では、咀嚼(そしゃく)の効用として次のようなことを挙げています。
- 食べ物本来の味がわかり、おいしく味わえる
- 口や顔の発育を促進する
- 唾液の分泌を促進する
- 胃腸の働きを助ける
- 栄養素の吸収を助ける
- 肥満を予防する
- 脳の血流を促進する
- 歯や歯ぐきを強くする
- 発がん物質の働きを弱める
- 全身に力を入れやすくなる
- 骨粗しょう症を予防する
これらは「ひみこのはがいーぜ」という合言葉でまとめられています。

それぞれについては、以前の記事でもご紹介しましたね。
目標は「一口30回」
厚生労働省は「噛ミング30(カミングサンマル)」として、一口30回以上噛むことを推奨しています。
とはいえ、毎回30回数えるのはなかなか大変です。
「ア・リ・ガ・ト・ウ・ゴ・ザ・イ・マ・ス」と心の中で唱えると約10回。食べ物への感謝を込めて3回唱えると30回になります。
また、「もしもしかめよ、かめさんよ」でおなじみの『うさぎとかめ』の1番を思い浮かべながら噛むと約28回。あと2回噛めば30回です。


ただし、カチカチと歯だけで噛むのではなく、舌や頬もしっかり使ってモグモグ噛むことが大切です。
子どもたちの食べ方を見て感じたこと
以前、小学生がお弁当を食べる様子を見せていただく機会がありました。
上手に食べる子もいれば、口いっぱいに詰め込む子、いつまでも口の中にため込んでなかなか飲み込まない子など、食べ方はさまざまでした。
観察した内容を学校の先生にお伝えしたところ、「どうして分かるのですか!」と驚かれました。
実は以前から、「食べ方に問題が見られる子どもは、日常生活の中にも何らかの課題を抱えていることが少なくない」というお話をしていたのです。実際に、生活習慣や家庭環境、人との関わり方など、さまざまな背景が見えてくることがあります。
「お口は生活の鏡」と言われます。
むし歯や歯周病だけでなく、食べ方や噛み方にも生活の様子が表れます。時には、お口の状態から虐待やネグレクトが発見されることもあります。
子どもや高齢者など、自分からSOSを発信しにくい人にとって、周囲が変化に気付くことはとても大切です。
噛めているかチェックしてみましょう
次のような様子は、噛む機能が十分に発揮されていないサインかもしれません。

判断が難しい場合は、歯科医師や歯科衛生士など専門家に相談してみましょう。
「食欲はあるのに食べにくい」
あるドラマのワンシーンで、こんな場面がありました。
「食欲はあるし、味も分かる。でも、なんだか上手く食べられない…」

患者さんの訴えに対し、言語聴覚士さんが飲み込みの状態を確認したところ、飲み込みには問題がなく、痩せたことで義歯が合わなくなり、噛みにくくなっていたことが原因、「退院したら歯医者さんで入れ歯を調整してもらってくださいね」これで一件落着なのですが…、歯科に関わる立場としては、「ぜひ歯科も早い段階から関わらせてほしい!」と思ってしまいました。
実際、多くの病院ではNST(栄養サポートチーム)に歯科衛生士が参加しています。
噛みにくい状態が続くと、どうしても軟らかい食事中心になります。しかし軟食ばかりでは噛む力が衰え、歯ぐきも痩せやすくなってしまいます。

食べられるものだけを選ぶのではなく、「しっかり噛める状態を維持する」ことも大切なのです。
しっかり噛んで健康づくり
噛むことは、単に食べ物を細かくするためだけの働きではありません。
脳や胃腸の働きを助け、歯や歯ぐきを守り、全身の健康にもつながっています。
「最近よく噛めていないな」
「食べにくさを感じるな」
そんな時は、ぜひ一度ご自身のお口の状態を見直してみてください。
歯や入れ歯の問題だけでなく、舌や頬の動き、食べ方のクセが関係していることもあります。
困った時には、歯科医師や歯科衛生士に相談してみてくださいね。
今日の食事から、一口30回を目標に。
しっかり噛んで、おいしく、楽しく、健康づくりを続けていきましょう。

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